CSRDとSSBJを両方出す企業のためのツール比較
CSRDとSSBJを両方出す企業のためのツール比較
想定している読み手ははっきりしています。本社は日本、プライム上場、そしてOmnibusによる縮小後もCSRDの対象に残る規模の欧州子会社を持つ会社です。同じ数値をもとに、CSRDとSSBJという別々の基準で、別々の期限に向けて二度提出します。作成言語も英語と日本語に分かれます。
サステナビリティ報告ソフトの比較記事は、たいていこの読み手を想定していません。アジア太平洋の買い手向けの10製品比較と、AI報告ツールの評価方法は別に書きました。この記事はもっと狭く、4製品、1つの買い手像、そして各社が自社サイトで公表している事実だけを扱います。
価格は出しません。4社とも定価を公表していないため、金額を書けばそれは作り話になります。
二重提出のカレンダー
欧州側では、指令(EU)2026/470が2026年3月18日に発効しました。対象は従業員1,000人超かつ売上高4億5,000万ユーロ超の企業に絞られています。対象企業は2027年1月1日以後に開始する事業年度について報告するため、最初の報告書は2028年になります(DLA Piper)。改訂ESRSは2026年7月3日に採択され、同じ事業年度から適用されます(欧州委員会)。
日本側のほうが先に来ます。2026年2月20日の内閣府令により、平均時価総額3兆円以上のプライム上場会社は2027年3月31日以後に終了する事業年度からSSBJの適用が義務づけられ、1兆円以上は2028年から続きます(IFRS財団 日本プロファイル)。時系列はSSBJロードマップに、二重報告については別記事にまとめてあります。
有報のほうが先で、欧州の報告書はその一年後です。この順序が、この買い手にとってのツール選定を他社と別の問題にしています。
見るべき四点
確認する項目は次の四つです。
- ベンダー自身の言葉で、SSBJが自社サイトに書かれているか
- 日本語で作成とレビューまで回せる製品か
- CSRD側がXBRLタグ付けまで届いているか
- 数値ごとに、保証機関が辿れる来歴が残るか
これ以外の違いは、デモで見れば分かります。
Workiva
この分野の既存最大手で、欧州側の仕組みでは4社のうち最も厚みがあります。ニューヨーク証券取引所にWKで上場しています。サステナビリティのページでは、ISSB、CSRD、カリフォルニア州の気候関連法などに沿った記述の作成と、ESRS・ISSB・CDPへの指標のマッピングを掲げています(Workiva)。
深さが出るのはCSRDのページです。「XBRL® tagging for ESRS, Article 8, ESEF and local taxonomies」と明記し、「enable audit-readiness with full data lineage and controls」、さらにデータの検証、統制の設計とテスト、変更履歴の追跡を挙げています(Workiva)。財務報告の出自がそのまま出ている部分で、ESEFタグ付けが必要な範囲では実際に強みです。
日本語サイトも運営しています。開示管理のページには「金融庁や東京証券取引所の報告要件からSSBJ対応まで、日本市場向けに最適化」「プラットフォームは日本語に対応しており、日本語でのレポート作成や一元管理」と書かれています(Workiva Japan)。拠点一覧には東京のWorkiva Japan合同会社が載っています。
排出量計算については、2024年6月にSustain.Lifeを買収し、Workiva Carbonとして統合しています(Workiva ニュースルーム)。開示プラットフォームに後から加わったエンジンです。
Persefoni
出発点はカーボンアカウンティングです。自社のaboutページでは「Climate Management & Accounting SaaS Platform」と自称し、企業と金融機関が気候インパクトを算定・開示・管理するために使うと説明しています(Persefoni)。非上場です。共同創業者は同ページに記載がありますが、設立年は書かれていません。
規制報告のページが挙げているのはTCFD、CSRD、SASB、SBT、PCAF、カリフォルニア州SB 253およびSB 261です。GHGプロトコルに沿った計算と高度なデータ統制を掲げ、保証について「Easily grant assurance and service providers access to the platform to streamline review」としています(Persefoni)。監査証跡やデータ来歴に関する記述は、このページでは見つかりませんでした。
SSBJについては自社コンテンツで扱っており、2025年3月にSSBJが最初の開示基準を公表し、IFRS S1・S2を取り込んだものであることを説明しています(Persefoni)。日本語サイトpersefoni.com/jaはHTTP 200で開き、SSBJをテーマにした日本語ウェビナーもそこに置かれています。日本法人や日本拠点の記載は見つかりませんでした。
Watershed
自社サイトでは2019年開始、約400名、サンフランシスコ、ロンドン、ニューヨーク、シドニー、パリ、ベルリン、メキシコシティに拠点があるとしています(Watershed)。日本は含まれていません。
CSRDのページは範囲について率直です。「One AI-accelerated platform to collect, measure, author, and file your CSRD report—with the data lineage, controls, and documentation you need built in」。証跡については3社のなかで最も具体的で、「Every reported figure traces back to its source data, calculation, and approver—automatically」と書かれています。データはCDP、TCFD、ISSBなどに自動でマッピングされるとしています(Watershed)。
SSBJはIFRS S1・S2の上に組み立てられているので、このISSBマッピングは日本の買い手にとって意味があります。ただしSSBJ対応と同じではありません。watershed.comを調べた範囲では、SSBJという語は見つかりませんでした。日本語サイトもありません。watershed.com/jaとwatershed.com/ja-jpはいずれもHTTP 404を返し、トップページの言語切替は英語、ドイツ語、フランス語です。作成もレビューも日本語で回している体制であれば、そこはデモで確認するしかありません。
Socious Report
Socious Reportは、一つのデータセットからCSRD・ESRS、SSBJ、ISSB、GRIの報告書をAIで作成し、完成した報告書に独立したSocious Verify認証を付けます。無料のレディネスチェックはsocious.io/ja/ssbj-checkとsocious.io/ja/csrd-checkにあり、日本語と英語で使えます。
既存製品が強い部分は、実際に強いです。WorkivaのESEFとArticle 8のXBRLタグ付け、統制テスト、財務報告部門にすでに入っている導入実績は、後発が主張だけで並べるものではありません。Watershedの排出係数データベースも、Persefoniのカーボンアカウンティングも、その一点を長く作ってきた成果です。いまESEFタグ付けの深さが要る企業や、グループのESEF提出をすでにWorkivaで回している企業は、そこを重く見るべきです。
Socious Reportの主張はもっと狭く、二重提出の会社に向けたものです。SSBJとCSRDを同じデータセットの二つの出力として扱い、日本語の出力を最初から用意しています。
確認できなかったこと
Workivaも Persefoniも、確認したページには設立年の記載がありませんでした。3社とも、自社サイトで公表された日本の顧客名は見つかりませんでした(網羅的に探したわけではありません)。読んだページの範囲ではGRI対応の明記も見つかりませんでしたが、それは存在しないという意味ではありません。Watershedのカリフォルニアページにあるとされる保証関連の記述は、直接取得して確認できていません。ベンダー自身のサイトで読めなかったことは、推測せずに落としました。
選定の進め方
デモでは各社に同じ課題を出します。自社データからESRSの記述セクションを一つ作ってもらい、同じ数値をSSBJの様式に載せて日本語のレビュー履歴まで残してもらう。そのうえで、出力されたScope 2の数値を、その場で電力の請求書まで遡ってもらいます。
これを両言語でこなせたベンダーだけが候補に残ります。そこから先は調達部門の仕事です。
準備状況を確認しませんか。 無料のSSBJレディネスチェックは3分ほどで、保証で実際に問われる観点を採点します。socious.io/ja/ssbj-check からどうぞ。
Socious Reportは、一つのデータセットからCSRD・SSBJ・ISSBの報告書をAIで作成します。そのうえに独立したSocious Verify認証が付きます。