2026年のスイス:いま適用される気候報告命令は、2024年施行のままである
スイスで報告している企業が、ISSBへの整合を待っているのであれば、待つ必要はない。改正は諮問にかけられ、内容としては支持を得たうえで、一時停止された。2026年度に適用されるのは、2024年1月1日に施行された規則のままである。
これを明確に書く理由がある。スイスにはいま、似た名前の案件が複数並んでいる。停止中の命令が一つ、諮問中の法案が一つ、そして一語しか違わない別の命令が一つある。取り違えやすく、取り違えると費用がかかる。
命令と、その改正の経緯
気候報告命令(Verordnung über die Klimaberichterstattung)は2024年1月1日に施行された。債務法964a条から964c条の非財務報告義務の下位規則であり、TCFD提言に基づいている。
2024年12月6日、連邦参事会は改正案を諮問にかけた。国際的な基準による報告をもって命令の要件を満たせるようにする、という案である。想定されていたのはISSBと欧州のESRSである。
2025年3月21日、連邦参事会は諮問結果を了承し、債務法の規定そのものを実務的に改正する選択肢の検討を司法警察省に委ねた。
そして2025年6月25日に止まった。連邦参事会自身の発表にこうある。「die Revision der Verordnung zur Klimaberichterstattung von Firmen vorläufig zu pausieren」(企業の気候報告に関する命令の改正を当面停止する)(SIF, 2025年6月25日)。
改正が不評だったわけではない。同じ発表は、諮問において改正は内容面では多数から歓迎された(「wurde die Revision inhaltlich zwar mehrheitlich begrüsst」)と記し、上位法が固まるまで施行を待つよう広く求められたと続けている。停止は、債務法の改正と欧州連合の規制動向が明確になるまで、いずれにせよ遅くとも2027年1月1日まで(「spätestens jedoch bis zum 1. Januar 2027」)とされている。
したがって命令は現行のままである。ISSBやESRSで代替できるという選択肢は施行されていない。
細部には救いがあり、停止の影響が見た目ほど大きくない理由にもなっている。この命令はTCFD提言に基づいており、IFRS S2も同じ提言を土台にしている。現行命令に沿って作られたスイスの報告書は、S2が求める内容の大半をすでに含んでいる。気候関連のリスクと機会について、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標を記載する構成である。ISSBへの整合が実現したときに主に加わるのは、数値の出所に対する厳密さであって、新しい設問ではない。
これは順序の問題として効いてくる。2026年度の報告をつなぎの作業として扱えば、停止が解けた時点で作り直すことになる。S2がすでに施行されている前提で2026年度の報告を組み立てれば、今年のスイス報告として成立し、将来の変更は書式の作業として吸収できる。
対象企業を半減させる法案
2026年4月1日、連邦参事会は「持続可能な企業経営に関する連邦法」の諮問を開始した。同名の国民発議に対する間接的対案であり、発議自体は否決する立場である。諮問は2026年7月9日まで行われた(連邦参事会, 2026年4月2日)。
この法案には、スイスの報告制度の形を変える点が三つある。
義務自体は残る。連邦参事会は維持する方針を明記している。「An der Pflicht zur Nachhaltigkeitsberichterstattung will der Bundesrat festhalten.」
対象は縮む。大企業のみが対象となり、発表はその規模を「rund 100 statt den aktuell 200 Unternehmen」、現在の約200社に対して約100社と数えている。規模の数値基準は示されておらず、中小企業は直接の対象ではないと述べている。
残る企業には保証が義務づけられる。対象企業は報告を外部の監査法人に検証させることになる。現行のスイス制度に一般的な保証義務はないため、引き続き対象となる企業にとっては、こちらの方が大きな変更である。
これとは別に、人権および環境デューデリジェンスが約30の大企業に適用される。現行では児童労働と紛争鉱物のリスクに限られている。
この発表は気候報告命令に触れていない。二つの流れは別のままであり、命令の停止はこの法案の帰結ではなく債務法の判断に結びついている。
名前の似た別の命令
同じ時期に、連邦参事会は2026年9月9日に気候保護命令(Klimaschutz-Verordnung)の改正を採択し、2026年11月1日から施行している。
これは別の命令である。対象は連邦行政自身の排出であり、企業報告ではない。名称は一語違い、日付は近く、スイスの気候関連命令を検索すれば両方が出てくる。どちらを指しているかの確認は十秒で済み、自信ありげな要約の誤りを何度か防いでいる。
報告担当が実際にすべきこと
2026年度は変更なしとして進める。債務法964a条から964c条と、2024年1月以降の気候報告命令に基づいて報告する。ISSBの選択肢が使えるという前提は、2024年の諮問草案に基づくものである。
報道ではなく二つの日付を見る。命令の停止は遅くとも2027年1月1日に終わる。その前提となる債務法の判断は2026年春までとされ、上記の法案として出てきたが、諮問、議会への教書、議会審議が残っている。この流れで報告義務が動くのは、早くても2027年度である。
対象外になることを前提に計画しない。200社から100社に絞られる過程で外れた企業は、法定の提出義務を失う。問い合わせは失わない。EUの顧客は自社のバリューチェーン開示のために排出量を必要とし、銀行は従来どおり尋ね、日本やドイツの親会社からのデータ依頼はこれまでと同じ時期に届く。法定義務は、同じデータへの要求のうち最も小さいものである。
規制の要約をもう一つ読むより、次の三点を確かめる方が早い。一つ目は、報告書のある排出量について、裏付けとなる活動量データを出所の資料まで一日以内に示せるかどうか。二つ目は排出係数である。各数値がどの版を使ったかを把握していれば、係数が改訂されたときに過年度を再計算できる。三つ目は、最大の取引先が自社の様式ではなく先方の様式でスコープ1・2を求めてきた場合にかかる時間である。ここでつまずく企業が最も多く、原因はたいてい様式ではなくデータの持ち方にある。
一度作って、複数に割り当てる。必要な粒度のスコープ1・2を、活動量データが出所まで追跡でき、算定方法が文書化された状態で持っていれば、現行の命令にも、停止が解けた後のISSB整合の制度にも、止まることのなかった顧客からの依頼にも答えられる。法域は名称を並べ替え続ける。測定の中身は変わらない。これを開示の問題ではなくデータの問題として扱うチームの方が、規則が動くたびの費用が小さい。
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